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第五回 黒すぐりミステリー


こんにちは。あうくだの母です。いよいよ本格的に春ですね。今年は花粉の飛散がとっても多くて、あうくだの父は毎日涙目でたいへんです。ピークは過ぎたようですが、皆様もお気をつけください。


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イメージイラスト イメージイラスト  さて。今回はジャムの話を少し。
 皆様は黒すぐりのジャム(ブラックカラント・ジャム)というものをご存じですか? 黒すぐりというのはラズベリーのような小さな実で、その名のとおり黒いのだそうです。「そうです」としか書けないのがくやしいところですが、実物を見たことがないので仕方がありません。
 私が最初に「黒すぐり」という言葉を知ったのは、アガサ・クリスティーの小説からでした。かの名探偵エルキュール・ポアロが黒すぐりのシロップを飲むシーンがあったのですが、当時中学生だった私は「黒ぐすり」と読み間違え、ポアロは風邪でもひいていて、シロップ状の黒い風邪薬を飲んでいるのかと思っていました。もちろんその誤解はすぐにとけましたが、長いあいだ「黒すぐり」の正体を知らずに過ごしていたのです。

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イメージイラスト イメージイラスト  その後、大学生になってから、デパートの輸入食品コーナーでようやく黒すぐりのジャムに出会うことができました。アヲハタのジャムが200円ぐらいのときに、たしかひと瓶800円でした。内容量は300グラム以上あったと思いますが、それでも約2倍の値段です。ほかにもブラックベリーやラズベリー、アプリコットなどのめずらしいジャムがたくさん並んでいて、外国の人はこんなにいろいろな種類のジャムを食べているのかと感心してしまいました。なにしろうちの近所のスーパーには定番のいちごジャムにマーマレード、それにりんごジャムぐらいしかなく、いま大人気のブルーベリージャムもときどき棚のすみに2、3個置いてあるだけというありさまでした。
 それとくらべると、いまは小さなスーパーでも品数が多いですねー。コンビニに対抗しているのかもしれませんが、とくに嗜好品の品揃えがいい。紅茶好きの私としては、ティーバッグのみならず缶入りのリーフティーが何種類も並んでいるのを見ると、うれしくなります。以前とくらべて値段も安くなったし。
 安くなったといえば、輸入食材もそうですね。前述の黒すぐりのジャム。円高の影響もあるのでしょうが、デパートでも600円、ディスカウントストアだと450円ぐらいで売られていました。さらに先日、近くのスーパーで385円のブラックカラント・ジャムを発見!! 黒すぐりなんていうマイナーなものを置いているだけでも驚きなのに(このスーパーはコンビニ2軒分ぐらいの小規模な店です)、385円!! いやー、うれしいですねえ、ほんとに。

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イメージイラスト イメージイラスト  さっそく買って帰って、いざ味見を……と、ここで、私は考えました。
 せっかくのブラックカラント。ポアロも食した黒すぐり。ここはやっぱり英国調にいただかねば……というわけで、まずはスコーンを作ることにしました。
 小麦粉にバターをねりこんで、砂糖と卵と牛乳少々。レーズンも入れて、丸型で抜いて、170度のオーブンで15分。焼き上がりに合わせてお茶の用意もしておきましょう。まずはたっぷりのお湯をわかして、ポットとカップをあたためて、こくのあるイングリッシュ・ブレックファスト・ティーをいれます。このイングリッシュ・ブレックファストというのは朝食時によく飲まれるブレンドティーの銘柄で、各紅茶会社から発売されています。たいていはインド、セイロン、ケニア産のお茶のブレンドで、ミルクティー向きのお茶です。スコーンが焼けたら、さめないうちにバターと黒すぐりのジャムを添えて、いただきまーす!
 もぐもぐもぐ……(しばし無言のおおたきいっか)。
 「これがポアロの好物、黒すぐりかー」と、あうくだの父も感慨深げな様子。あうくださんはジャムを山盛りにぬってぱくぱくと食べ、「ブラックカンおかわり!」とすっかり気に入ったようでした。

 クリスティーの『ポケットにライ麦を』という小説の中には、お茶を飲むシーンが何度も出てきます。読みながら、本場のアフタヌーンティを想像することしかできなかった20年前と違って、いまでは自宅で午後の紅茶を楽しむことができるようになりました。昨今の英国ブームに感謝、ですね。

 やっと規定字数に達しそうです。よかったよかった。
 今回はなかなか筆が(ワープロが?)進まなくて、冷や汗をかいてしまいました。
次回はもっとなめらかに書きたいなあ。よろしくおつきあいください。
 では、またお会いしましょう。  


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1999年4月号

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