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特集 坊ちゃん列車に乗ろう



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坊ちゃん列車の歴史と復活

 「伊予鉄道は」明治20年9月14日に創立、翌年の明治21年に松山市駅〜三津間の営業を開始。狭軌の軽便鉄道としては日本初、民営鉄道としては「南海鉄道」に次ぐ日本で2番目の歴史を有している。
 その主役として活躍したのがドイツ・ミュンヘン州クラウス社製の蒸気機関車と小型客車で、夏目漱石の小説『坊っちゃん』で“マッチ箱のような汽車”と表現され、後に「坊っちゃん列車」の愛称で呼ばれるようになった。
 「坊っちゃん列車」は、営業開始時から、ディーゼル化によって第一線を引退する昭和29年まで、67年間にわたり走り続けた。
 現在、機関車は鉄道記念物に、さらに客車を含めて県文化財に指定され、梅津寺パークなどに展示されてる。(写真は伊予鉄道本社前に展示されている実物大模型)
 坊っちゃん列車は、ドイツから来た1号機関車をモデルに復元。復元には安全面、技術などで数多くの難題があったが、地元地域からの坊っちゃん復活を望む熱い声を受け、2001年10月、ついに復活運転が実現した。
 路面を走る客車列車という非常に珍しい形態で復活した坊ちゃん列車は、今日もビルの谷間、自動車に追い抜かれながらも元気に走っている。松山の街に「ポーッ」と汽笛がこだまする。


路線図

予約不要で気軽に乗車できる

 列車の運行区間は道後温泉駅〜大街道〜松山市駅と古町〜JR松山駅前〜大街道〜道後温泉駅の二系統あり 特に古町、JR松山駅前を通る路線は運転本数が少ないので、あらかじめダイヤを調べておきたい。
 途中の大街道・JR松山駅前でも乗降可能、上一万・南堀端は降車のみ可能で他は通過駅になっている。運賃は乗車1回につき大人300円、小児200円、1乗車+1Dayチケットは大人500円、小児300円 で発売されている。
 また、すでに1Dayチケットを所持している人は、大人200円、小児150円を支払えばいつでも乗ることができる。

D1号機のムービーを見る D14号機のムービーを見る



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2004年3月現在の時刻表


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レトロな雰囲気が旅情をさそう

   レトロな風情いっぱいの道後温泉駅で「坊ちゃん列車乗車券」購入して、いざホームへ。坊ちゃん列はシューッシューッと蒸気機関車らしい音をたてながら入線してくる。明治時代風の制服を着た乗務員さんに乗車券にハサミを入れてもらって乗車(これも現代の日本では珍しくなった)。客車内は壁も座席も木製で、木のぬくもりが感じられる。
 やがて列車は「ポーッ」というかわいい汽笛とともに発車。煙突からは白い煙がもくもくと上がる。木製の四角い車窓から眺める松山の街が、松山生まれでもない著者にもなぜか懐かしく思えてくるから不思議だ!

客車について:D1号機にはハ1形客車(ハ1・ハ2)D14号機にはハ31形客車(ハ31)が連結される。いずれも半鋼製車体の複製客車である。
ハ1形は全長5,040mm、側面4枚窓、定員18名、ハ31形は全長6,952mm、側面8枚窓、定員36名。いずれも「マッチ箱汽車」の雰囲気そのものの簡素な造りで、足回りは軸バネ車体直結式の2軸構造、デッキは開放式、座席も木製でクッションなしと、ほぼ原形車の仕様そのままだ。また車号表記も省略されており、ハ1形は外観から車号を特定できない。



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ハイテク技術とアイデアが満載だ

 D1形ディーゼル機関車とD14形ディーゼル機関車は、軽便線時代の伊予鉄道で使われていた蒸気機関車2両を、現在の路面軌道線の運行基準に合わせて複製したものだ。設計のベースとなった車両は、D1号機が甲1形1号機(明治21年製)、D14号機が甲5形14号機(明治40年製)で、運転室窓や煙突の形状、給水筒の有無などに相違が見られるが、性能的には2形式間に相違はない。製造には路面電車、気動車、客車すべての製造実績を持つ旧新潟鐵工所(現:新潟トランシス)が当たった。
 蒸気機関車のままでの複製が環境問題などの点で難しいことから、動力はディーゼルエンジンに決定された。原形車のボイラー室に相当する部分に気動車用のものに準じた6気筒エンジンを内蔵している。運転台(写真左)も気動車に似た構造で、操作機器類は運転室左側に集中配置。またSLの雰囲気を擬似的に再現するため、電子式走行音発生装置や油煙排出機構(煙突部)を特別に装備している。また、現代の路面電車のような大きな窓やバックミラーを付けるわけにゆかなかったので、視界を確保するためCCDカメラと液晶モニターも装備されている。
 もともと坊ちゃん列車は伊予鉄道の郊外線を走っていた。復活運転する路面区間の駅にはターンテーブルを設置できるスペースがなく、機関車の方向転換は困難だった。この問題点を機関車本体に油圧式ジャッキを用いた方向転換機能を持たせることで解決している。方向転換は古町、松山市駅前(写真右)、道後温泉の3か所で行われており、その作業になぜかなつかい昔の風情を垣間見ることができる。


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もうひとつの変り種発見

 各客車の屋上には、ビューゲル(ハエたたきに似た形をした集電装置で旧型電車に使われた)に似た形状の可動式装置が載っている。
 坊ちゃん列車はディーゼルエンジンで走るので架線から電気を取る必要はないが、路面電車用の信号切り替えスイッチ(トロリーコンタクター)は架線脇に取り付けられている。これを作動させないと信号がいつまでたっても変わらない。
 そこでこの「進路制御装置」と呼ばれてる装置が考え出された。この装置は西堀端、南堀端、上一万の各分岐点と勝山交差点の通過時に使われる。操作用の引き紐はデッキにあるため、これらの地点の通過時には乗務員が客室からデッキに移って装置の上げ下げを行う。


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道後温泉駅は見所いっぱい

 道後温泉駅の駅舎は三角ペディメントのついた上げ下げ窓、屋根のドーマー・ウィンドウと繊細な金属の装飾など、本格的なルネサンス様式を取り入れて建てられてた。
 夏目漱石著「坊っちゃん」の中で、江戸っ子の「坊っちゃん」は松山をさんざん田舎扱いしているが、しばらくあとにこの駅ができたのを見たらさて、何と言ったか・・・。
 1階には、坊っちゃん列車の客車をイメージしたオープンカフェ「カフェ坊っちゃん列車」があり、坊っちゃん列車・からくり時計を眺めながら一時を過すことができる。
 また、ショップ坊っちゃん列車では地元の砥部焼や木工品、タオル、伊予がすりなどの坊っちゃん列車グッズをはじめ、精密模型、Tシャツ、帽子、文房具、などのいろいろな商品が販売されている。
 2階は「坊ちゃん列車と道後浪漫館」として公開されている。(入館無料 9:00〜18:00 無休) かつての坊っちゃん列車と、その当時の道後の街、人々をテーマに展示をしており、古き風情が残る明治、大正、昭和初期のレトロな写真や用品(写真)を展示している。  


平面交差の写真

全国で唯一残った路面電車と郊外電車の平面交差

 伊予鉄道には、全国的にも非常に珍しい鉄道線路が平面交差する、通称「ダイヤモンドクロス」が2カ所もる。路面電車全盛期には各地で見られた平面交差も現在では非常に少なくなった。しかも路面電車と郊外電車が交差するのはここだけである。
   今回掲載したのは大手町駅前。もうひとつは古町駅にあるが、ここは駅構内で斜めに交差しているので目立ちにくく、気が付かない乗客も多いと思われる。
 大手町駅前では、全て郊外電車の高浜線が優先。路面電車は自動車と同じく踏切待ちをして、郊外電車が通り過ぎるのを待つ。

平面交差のムービーを見る



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もうひとつの新型車両2100系

 近年、バリアフリー法等により交通弱者支援策が社会的な責務となってきた。高知、熊本、広島、鹿児島など各地の路面電車に超低床車両が導入されるようになった。しかしいずれも車長の長い連接車で、伊予鉄のように松山市駅前等狭い構内で折り返し運転をするには連接車ではスペースの確保ができず導入が難しかった。
 こうしたなか、メーカー(現:アルナ車両)と種々検討の結果、日本で初めての単車形式の超低床式軌道電車の開発に成功。モハ2000系電車として2002年3月より運転をを開始、2004年3月現在6両が運行されている。
 この車両の最大の特徴は、床面高さがレール面から350mmと超低床となっている点で、車椅子やベビーカーでのも楽に乗降することができるようになった。
 人に優しいデザインを取り入れるとともに、合成音放送による車内放送、液晶ディスプレイによる案内・広告、高加速性能で定評のあるVVVF制御のモーター、経済的な回生ブレーキなど最新技術満載の電車だ。
勝山付近を走る2100系電車のムービーを見る



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この記事は2004年3月現在の資料で作成しました。

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